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次なるモバイルゲーム業界の巨人は? 2018年のモバイル業界の M&A 動向から考える

Nori Hayashi
12月 19日, 2018
ゲーム 買収 AppLovin

この5年でモバイルゲームはゲーム市場のほんの小さな分野から、700 億ドル規模の業界へと成長しました。こうした中で、2018年はZyngaによるGram Games 買収、Playtika による Wooga 買収などがあり、モバイルゲーム業界再編の年となりました。

モバイルゲームでヒットを飛ばすインディーデベロッパーが、投資先として注目されるのは自然な流れでしょう。モバイルゲームの可能性にもはや疑問の余地はなく、収益が見込まれる分野であることは明白です。たとえばアクションビルディングゲームの Fortnite は、シーズン5のローンチ後、1日で約300万ドルを生み出しています。

こうしたモバイルゲームの売上増加は大手の主要ゲームだけにみられるわけではありません。インディーゲームが次々と App Store のランキング入り続けています。アプリ内課金からの収益は、US App Store ランキング5位以内だと1日当たり約75万ドル、10位以内だと同約 34万ドルに上ることがあります。

早い段階でこうした状況を理解していた業界プレイヤーは、トレンドに乗り、ビジネスを成長させてきました。たとえば、Activision Blizzard は 2015 年に約60億ドルで「キャンディークラッシュ」で知られるモバイルゲームデベロッパーの King を買収しました。巨額買収は実を結び、「キャンディークラッシュ」が四半期ベースで過去最高の業績を収め、King の収益は昨年末、Activision Blizzard 全体の収益の3分の1を占めました。


今回は、2018年の業界内のM&A 動向を踏まえて業界の展望を考えたいと思います。


Zynga による Gram Games 買収


Gram Games はハイパーカジュアルゲームの飛躍で重要な役割を担うデベロッパーの1つです。Zyngaによる買収の際、同社の9つのタイトルの総ダウンロード数は 1.7 億件を超えるまでに成長していました。2.5億ドルの大型案件となったことは、Zynga のハイパーカジュアルゲームへのコミットメントの裏付けとなりました。

今年、ハイパーカジュアルゲームへの巨額投資を行ったのは Zynga だけではありません。 米大手投資銀行ゴールドマンサックスは、「Helix Jump」などで知られるハイパーカジュアルゲームパブリッシャーの Voodoo への2億ドルの投資を実行しました。同社のゲームはいたってシンプルですが、世界大手の投資銀行の目にとまるには十分な魅力がありました。

こうした流れは、2016年に Ubisoft が Ketchapp を買収した頃から続いています。Ketchapp のゲームはローンチから2年でダウンロード数7億件に達しています。

 

Niantic による Seismic Games 買収

 
ポケモンGOを開発した Nianticは、LAを拠点とするデベロッパーの Seismic Games の買収を発表しました。Niantic の次のステージを強く予感させる野心的な動きでした。ハイ クオリティのモバイルの VR(仮想現実)を提供する上で、Seismic は大きな存在感を示していました。


Snap による PlayCanvas 買収


Business Insider は3月、Snapchat を開発する Snap Inc. が 3D モバイルゲームのスタートアップである PlayCanvas を買収していたと報じました。Facebook は初期にデスクトップのカジュアル ゲームで利益をあげましたが、メッセンジャー機能に組み込んだインスタントゲームでは遅れをとりました。Snap は、PlayCanvas の買収でユーザー基盤をさらに若い世代に広げ、 モバイルゲームの分野で Facebook を超える存在感を確実にするかもしれません。ゲーム、 ショッピング、決済、メッセージ機能を全て1つのアプリで完結できることは、Tencent の WeChat で証明済みです。Snap は PlayCanvas の買収によって、Tencent と同じような道をグロ ーバルに進むつもりでしょう。


Warner Bros. による Plexchat 買収


Warner Brothers は今年7月、モバイルゲームのチャットサービスを提供するスタートアップの Plexchat の買収を発表し、ソーシャル分野の基盤強化を図る構えを示しました。ソーシャル・テクノロジーによって、つながりがカギとなるエコシステムは増幅し、さまざまなモバイルゲームデベロッパーが、よりソーシャルを重視した体験の提供に向けて取り組んでいます。こうした流れはさらに続くでしょう。


Playtika による Wooga 買収


Playtika はベルリンを拠点とするカジュアルゲームデベロッパーの Wooga を約1億ドルで買収しました。Playtika は将来性の高いカジュアルゲーム分野の強化に向けた動きと説明しました。Wooga 買収により、Playtika のタイトルの半分がカジュアルゲームとなりました。

 

2018年にモバイルゲーム業界でみられた数々の大型買収からは、いかにこの分野が成長し、 影響と存在感を持っているかがうかがえます。業界の流れに追いつこうとすれば、巨額の投資が必要であることも物語っています。モバイルゲームはいま最も熱く、プレミアムの高い業界の1つかもしれません。

 

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