過去数年にわたり、私たちは業界で最も高度なAI駆動型広告プラットフォームを、少数精鋭のチームによって構築してきました。2023年第2四半期にAxon 2をリリースして以来、当社プラットフォーム上の広告費は約4倍に増加し、AppLovinはこの分野で最も高い価値を持つ広告企業となりました。この急成長は、私たちのテクノロジーの強さとその影響力を示していますが、私たちがどのようにそれを実現しているのかを説明する機会はあまりありませんでした。本ブログでは、私たちのビジネスモデル、その利点、そしてデータに対するアプローチについて掘り下げ、投資家、パートナー、そして私たちの原動力に興味を持つすべての方々に、明確な理解を提供します。
AppLovinの使命はシンプルです。広告主に対して、追加的な収益をもたらすこと。それが私たちのゴールです。私たちが開発するすべてのプロダクトは、広告主が当社に投資した際に、その費用を上回る計測可能なリターン、すなわち成長を実感できるよう設計されています。これにより広告主のビジネスは成長し続け、私たちは大規模な営業チームを持たずとも事業を拡大することができているのです。それでは、この仕組みを詳しく見ていきましょう。
モバイルゲーム開発者たちは、毎月数十億人を楽しませる素晴らしい体験を作り出しています。しかし、競争の激しい市場において、オーガニックな流入を実現するのは容易ではありません。そこで広告はそのギャップを埋める役割を果たします。うまく機能すれば市場は拡大し、逆に機能しなければ成長は停滞します。
欧米のモバイルゲーム市場は2012年から2021年にかけて急成長しましたが、2022年には成長が鈍化しました。よくある説明として「コロナ後の影響」が挙げられますが、実際にはIDFA廃止後のマーケティングの困難さが、より大きな要因でした。この流れを変えた主なきっかけの一つが、Axon 2です。 Axon 2のリリース以降、私たちは市場の再成長を牽引してきました。アプリ内課金(IAP)収益は年間で一桁台半ばの成長率を見せており、MAXパブリッシャーの成長はそれを何倍も上回っています。その理由は? ゲームクライアント向けの広告費を年間約100億ドル規模にまで拡大し、Axon 2リリースからわずか2年で約4倍に成長させたのです。これにより、ユーザーへのリーチと収益の拡大が実現され、業界全体のエコシステムを支える原動力となっています。この革新的な技術を私たちが開発していなければ、今でも業界は苦境に立たされていたことでしょう。
eコマースをはじめとするウェブビジネスにおいても、「発見」は極めて重要です。多くの企業がMetaに大きく依存していますが、単一チャネルへの依存は成長を制限し、利益率を圧迫します。私たちは、既存のチャネルから予算を奪うのではなく、事業者が新たに広告費を投下できる場を提供し、ビジネス拡大の機会を生み出す、新たな選択肢をつくり出しました。もちろん、まだ完璧ではありません。現在のウェブ向け広告プロダクトは初期世代のROAS(広告費用対効果)モデルに基づいており、外部ツールとの連携は進行中、クリエイティブ表現にも制限があります。また、セルフサービスや代理店向けのダッシュボードもまだ公開されていません。ゲーム領域では年間広告費が10億ドル規模に達するまでに約10年かかりましたが、ウェブ領域ではそれを数か月で達成しました。今後、外部プラットフォームとの完全な統合や最適化機能の改善を進めていきます。
この成長を支えているのは何か?それは、私たちのAIエンジン「Axon」です。Axonは、広告主に対して実際の収益成果をもたらします。Grok 3のようなツールの背後にあるLLM(大規模言語モデル)をイメージしてください。近道ではなく、卓越したエンジニアリングによってゼロから構築されたものです。隠されたビッグデータのようなものは存在しません。Axonが活用しているのは、MAXのロス通知(すべての入札者が得られる標準化・一般化されたデータ)、広告主から提供されるデータ、ゲームの利用パターン、モバイルSDKやウェブピクセルから得られるサードパーティデータ、私たちの広告から得られるユーザーエンゲージメントデータの5つのデータソースです。その「魔法」は、モデルの高度な構造と、それを加速させる強化学習ループにあります。たとえば、ミニゲーム形式の広告を配信すると、私たちはそこから数十件ものユーザーインタラクションを回収できます。そのデータが予測精度を高め、差別化された競争優位性(moat)を築くのです。広告配信が増えれば増えるほど、モデルは賢くなります。高速にスケールし、高速に学習する——これがAIにおける勝利の方程式であり、私たちはそれを習得しています。
現代の広告はデータによって支えられていますが、その取り扱いについては多くの疑問も生まれます。ここでは、私たちがアプリやウェブサイト上でどのようにデータを扱っているのかをご説明します。
AppleのApp Tracking Transparency(ATT)は、アプリ内広告の仕組みを大きく変えました。ユーザーは、IDFA(広告識別子)を用いたアプリ間のトラッキングを許可するかどうかを選択できます。ユーザーがオプトアウトした場合、私たちは「デバイスフィンガープリント」と呼ばれるような、正確かつ持続的な代替識別子を生成することはありません。
では、どのようにして広告の関連性を保っているのでしょうか?
私たちのモデルは、幅広いシグナル(ユーザーが同意した場合の特定のシグナルと、一般的なシグナルの両方)を評価し、その時点で最もエンゲージメントやコンバージョンを促す可能性の高い広告を統計的に推定しています。
たとえば、新規ユーザーが初めてアプリを開いた際、モデルはアプリのコンテキスト、最近の広告パフォーマンス、ユーザーのIPレンジ(おおよその位置情報や閲覧傾向を一時的に示す可能性がある)などのシグナルを考慮します。これらの情報は一時的かつ個人を特定しないものですが、「コールドスタート(初回利用時)」の状況では有効です。
ユーザーの操作が増えるにつれ、モデルは学習・適応していきます。持続的にユーザーを識別する必要はありません。
このような環境では、IDFAは依然として非常に価値のあるシグナルです。長期間にわたってエンゲージメントを結び付けることができるからです。しかし、必須ではありません。たとえばMAXでは、米国の全画面広告のCPM(インプレッション単価)は、IDFAがある場合とない場合で約2倍の差があります。これは、IDFAの市場価値を明確に示しています。
まず私たちは、データブローカーからのデータを一切購入も販売もしていません。私たちが扱う情報は、広告サービスを提供するという目的に限り、パートナーが自らの意思で共有してくれたもの、あるいは私たち自身のツールを通じて得たもののみです。また、メールアドレス、電話番号、または現実の人物を特定可能にするような情報(個人識別情報)は一切取得していません。
アプリにおいては、iOS上のATT(App Tracking Transparency)に完全準拠しています。私たちのSDKが収集するのは、OSが公開・許可するAPIを通じて取得できる、基本的なデバイス情報のみです。これは主要な他社SDKと同様の仕様です。Adjustについても、広告主が明示的に共有を選んだ範囲のデータしか利用しておらず、Adjustは買収以降も独立したインフラ上で運用され、アトリビューション(効果測定)ロジックも当社の影響を受けていません。MAXにおいては、すべての入札者が受け取る標準的な「勝ち/負け通知」しか利用しておらず、入札ストリームデータ(bid stream data)は別途保持され、7日後に完全削除されます。
一方、クッキーとピクセルに基づくウェブの世界では、ATTの制限はありません。広告主は私たちのピクセルをウェブサイトに埋め込み、それによりユーザーの行動がモデルにフィードバックされ、広告配信の最適化に役立ちます。
たとえばCrocs.comでは、当社のピクセルにサードパーティクッキーやIDは付加されていません。これは、私たちがそういった情報を必要とせず、要求もしていないからです。一方でTheWoobles.comのように、FacebookやSnapchatのIDが当社ピクセルに付与されているケースもありますが、それはElevarという分析ツールが広告主の設定で自動的に追加したものであり、当社の意図ではありません。そのようなデータは当社サーバーに届いた時点で削除され、使用されることはありません。また、TrueClassicTees.comでは、「igId」というタグが当社のピクセルに追加されていることがありますが、これはInstagramのIDではなく、Intelligems.ioというA/Bテストプラットフォームが付与しているもので、これも当社は一切使用していません。当社のモデルは、あくまで自らが明示的に要求したデータのみを使用し、それ以外の「余計な」データは保持せず即時削除されます。私たちがどんなデータを求めているか知りたい方は、こちらの開発者向けドキュメントをご覧ください:https://developers.applovin.com/en/ecommerce/events-and-objects/ 予期しないデータは保管されることなく破棄されます。
より技術的な詳細に興味がある方は、CTOのブログで事例を詳しく紹介しています。
https://www.applovin.com/ja/blog/examination-of-e-commerce-data-practices/
私たちは、AppsFlyerやAdjustといったモバイル計測パートナー(MMP)に依存しています。これらは当社の広告システムと完全に統合されており、IDFAが利用可能な場合はそれを使用し、利用できない場合は確率的マッチングを用いて広告クリックとインストールを紐付けます。たとえば、短時間のうちに同一IPアドレス上で広告クリックとアプリインストールが発生した場合、それを関連付けます。IPアドレスは頻繁に変化するため、持続的なプロファイルが形成されることはありません。この仕組みにより、ユーザーが私たちの広告をクリックした後、そのインストールが当社の成果かどうかをMMPが判断してくれます。また、広告主が同意した場合には、インストール後に発生するアクティビティデータもMMPを通じて当社に共有されます。当社が計測するインストールの多くは、広告クリックから24時間以内に発生しており、一部の広告主では「インクリメンタリティ(広告による増加効果)」が100%を超えるケースも確認されています。つまり、私たちが成果としてクレジットを受け取っていないインストールまで提供できているということです。これは、当社の広告が大規模かつ実証されたインパクトを持っていることを示しています。
私たちのウェブ広告事業はまだ始まって数か月という段階であり、現在も構築を進めている最中です。アプリとは異なり、まだサードパーティのアトリビューション企業との完全な統合は行われておらず、現時点では自社の内部システムを使って広告主にレポートを提供しています。アトリビューションには、ファーストパーティのピクセルクッキーやトランザクションIDを使用しており、メールアドレスや電話番号などの個人情報は一切扱っていません。SafariにおけるAppleのITP(Intelligent Tracking Prevention)の影響で、クッキーの有効期間には制限がありますが、当社のウェブアトリビューションはその制約を前提とした設計となっており、80%のコンバージョンが24時間以内にチェックアウトに至っています。これが現代のウェブの在り方であり、私たちはそれに最適化されています。とはいえ、広告費の意思決定においては、ほぼすべてのクライアントが当社のアトリビューションではなく、自社が導入しているアトリビューションツールを使用しています。ラストクリックモデルやマルチタッチモデルなど、各社が最も信頼する指標を使って判断しています。第三者機関によるレポートでも、私たちのトラフィックが既存チャネルの食い合い(カニバリゼーション)ではなく、新たな需要を創出していることが確認されています。
今日のパフォーマンスマーケターたちは、分析力に優れたプロフェッショナルです。彼らは成果を測定するために複数のツールを駆使し、不正に資金を投じるようなインセンティブは一切持っていません。そうした中で、私たちは年間100億ドル以上の、確認済みで価値ある広告費を集める主要なプレイヤーとして位置づけられています。もし私たちが実際に成果を出せていなければ、広告主たちは損失を被るか、支払いを止めているはずです。それでも、当社の回収実績は極めて安定しています。これは、広告出稿の意思決定を行っているマーケターたちの鋭い判断力と、私たちが提供している確かな価値の証です。
データとアトリビューションについて一通り説明しましたので、ここで実際にAxonがどのように機能するのかをご紹介します。最初の事例は、当社初のビューティー系クライアント、メイクアップ商品を販売している店舗です。私たちは、化粧品購入に関する消費者の購買行動について何の事前知識も持っていませんでしたが、なぜ成果を出せたのでしょうか? その理由は、Axonが非常に速く学習するからです。
例えば、新しい広告が配信され、500インプレッションでクリック率は3%、つまり15件のクリックが発生しました。モデルは、反応しなかった485件から共通する特徴を減少させ、15件のクリックに共通する要素を強化します。その中にはサイト上で深いエンゲージメントを示したユーザーもおり、Axonはそれらに類似したユーザーをさらに見つけ出します。ここで強化学習ループが始動します。次の500インプレッションでは、クリック率とエンゲージメントがさらに改善されます。このようにラウンドごとにデータと結果をマッピングしながら学習を重ね、最終的には購買へとつなげていきます。この流れ、どこかで聞いたことがありませんか?TikTokのアルゴリズムも非常に優れていて、新しい動画に最適なオーディエンスを素早く見つけ出すために、同様の試行とフィードバックのサイクルを繰り返しています。これこそが私たちのパーソナライズの強みです。どんな広告主であっても、迅速に適応できるのです。
広告、AI、そしてプライバシー…これらは本来、ブログではなく、本一冊に値するほど複雑なテーマです。けれど、私たちの核心はとてもシンプルです。私たちはパートナーに確かな成果を提供し、成長を支え、何千もの雇用を生み出し、人々が好きなゲームや商品に出会う機会を創出しています。もちろんすべてルールの範囲内で。私たちの強みは、データを大量に抱え込むことではありません。少数の優秀なチームがつくり上げた、世界トップレベルのテクノロジーにあります。歴史を振り返れば、小さなチームが世界を変えてきた例は数多く存在します。Instagramの初期メンバー、Signal、Deepseekなどがその好例です。私たちは、そこに名前を連ねる存在であることを誇りに思っています。
このメッセージは、私たちのチーム、パートナー、そして私たちの歩みを見守ってくれているすべての人々に向けたものです。数ページで懐疑論者を説得しようとは思っていません。ただ、私たちがどう働き、なぜそれが重要で、どこを目指しているのかを、率直に共有したかったのです。
※本レポートの作成にはGrok 3を活用しましたが、最終的な内容および結論はすべて筆者自身のものです。