アプリ業界でのユーザー獲得(UA)は、特殊な専門知識をもつ小さなチームが取り組んでいるケースがよくみられます。少人数のチームではハードな仕事になりますが、適切なスキルのバランスであれば1~2人であっても素晴らしい成果をあげることができます。そのためには、それぞれのメンバーの専門性のバランスを踏まえ、全員が常に新たなことを学んでスキルアップしていける環境をつくることが重要です。
アプリデベロッパーの多くが、ユーザー獲得を小規模なチームまたは1人の担当者で運営している点を踏まえ、今回は無駄なくユーザー獲得戦略を展開し成功させるための実践的なヒントをまとめました。
今回はこれらのポイントを軸に、少人数でのユーザー獲得チーム運営についてお話します。
少人数のチームの場合は、メンバーの強みを生かして役割を分担することを考えるのがよいでしょう。 「Aces in Places」、つまり適材適所のようなコンセプトとして一部で取り組まれています。アプリマーケティングでチームメンバーのそれぞれが特定の専門性を持つ中では、その特定の分野に注力できるようにします(例えば、動画ネットワーク、ソーシャルメディアチャネル、エージェンシーや DSP 対応など)。例えば Space Ape Games では独自の方法でこのアプローチをとっており、年2回のペースで、チャネル・オーナシップ・バイイング、クリエイティブ・リード、ASO、テスト全般などで任務をローテーションしています。
この戦略により、Space Ape では日々の業務が洗練され、チーム内でお互いに学びあうことができるようになりました。メンバーがそれぞれ得意とする仕事を行い、一方で時々のペースで担当する役割をローテーションするなかで、メンバーはユーザー獲得の様々な側面について新たな知識を得ることができました。柔軟性を保ちながら仕事を通じた学びを続けることは、多くの組織が目指す持続的な成長という考えの核の1つを成すものです。
多くの組織では、ユーザー獲得チームの専門のメンバーが特定のチャネルを管理する一方で、データレポート、分析、キャンペーン管理などの役割を分担して行っています。少人数で、特に多忙なチームの場合は、迅速かつ臨機応変に知識を共有することがチーム全体の学びのために重要となります。そのため、様々なタスクのパターンを把握し、それらをテンプレート化して全てないし一部のチャネルに対して標準化することを考えるのが、ワークフローの管理におけるカギとなる場合があります。こうしたアプローチにより、スピーディーな環境でチーム全員がより効率的に動けるようになります。
ユーザー獲得チームの人材採用は簡単ではありません。モバイルのユーザー獲得に精通し、関連する経験を持つ候補者は簡単にみつかるものではありません。そこで、コアとなる「必須条件」をリストアップしてみます。例えばそれは、データや分析を扱うことに対する熱意、データドリブンな意思決定ができること、クリエイティブなリサーチや革新的なアイデアを追求する姿勢、あるいは、新しいプロダクトやテストに関して自然とイニシアチブをとることができることなどが挙げられるかもしれません。
求人を出す際には、データに基づくユーザー獲得に関連する最低限の知識やスキルについてリストアップしておくとよいかもしれません。これらはデータアナリストなどの採用にも役立つはずです。いずれにせよ、良い人材を獲得するためには、ネットワークの活用、リクルーターとの密な連携、そして自社をアピールできるようなイベントへの参加なども重要になります。
少人数のチームでは、日々の業務に追われ、キャリアを積むことで会社や個人がどのように成長できるのかといった全体的な視野を見失いがちです。こうした中で前向きに考えるべきは、新たな人材獲得や既存のチームメンバーの専門性向上に向けてできることに取り組むことです。例えば、従業員が自分の知識を高めるために講習・研修を受けたりできるような個人向けのトレーニング予算を確保するなどです。
Pocket Gamer のイベントや、Mobile World Congress などでは、ユーザー獲得に取り組むチームが最新のトレンドやテクノロジーを理解するのに役立つようなライブまたはバーチャルのセッションやクラスを提供しています。従業員のスキル向上は、本人の幸福や自信につながるだけでなく、担当する業務でのより良い仕事にもつながります。またこうしたカンファレンスなどへの参加は、ユーザー獲得チームの一段の成長と活性化につながるような新たな人材との出会いの機会にもなります。
ユーザー獲得戦略の立案・実行は、少人数のチームでは時に困難に直面することもあります。ただ一方で、小規模であることが強みになることもあり、そして何よりも、アプリの成長と収益を支えるのは質の高いユーザー獲得に継続的に取り組むことです。スマートなマーケティング戦略、既成概念にとらわれない発想、適切な人材があれば、たとえ1~2人の小さなチームであっても、アプリビジネスを効果的に成長させ、同時に自らのスキルや知識の向上を図ることが可能です。