AppLovin のパートナースタジオのユーザー獲得と収益化を統括する Jerome Turnbull が先日、長年の同僚・友人である Bill Walton を迎えて議論に臨みました。Bill は、Machine Zone でリードアナリストとして Jerome Turnbull と共に活躍した後、AppLovin のパフォーマンスマーケティングチームに加わり、インハウスの自動化ツール構築に携わっています。
Jerome はまず、次のように語りました。「Bill とのいちばんの思い出は『ファイナルファンタジー15: 新たなる王国』のローンチの夜のことです。全社総力戦の状態で、真夜中に電話会議をしていましたが、Billはまだオフィスで働いていました。そういうタイプの人物です。」
今回は2人が、パフォーマンスに基づくデジタルマーケティングを軸に、ユーザー獲得戦略をどのように決定するかを議論しました。主なポイントは次の2点です。
1.モバイルマーケティングの展望はどのように変化するのか?
2.デベロッパーは、プロダクトに合った戦略をどのように形成するべきか?
ここ数年で、マーケティングキャンペーンでターゲットとするオーディエンスの境界線は曖昧になってきており、結果としてオーディエンスの範囲が広がっています。Bill は「これまではどんな時でも特定のオーディエンスというのがありましたが、オーディエンスの範囲は広がり、特定のオーディエンスという線引きも薄れてきています」と言います。
Google や Facebook は以前、細かいレベルまでセグメント化されたオーディエンスをマーケターが見られるようにしていました。ここ最近では、こうした可視性はなくなっています。これまでは、各セグメントの予測価値を特定してインストール獲得に向け最適化し、より高いパフォーマンスを発揮しているオーディエンスに投資していましたが、最近は違うアプローチが必要になっています。
Bill は、2つのポイントを軸としたアプローチを提案しています。ただし、iOS 14のリリースでこれが変わる可能性もあると言います。
1.オーディエンスを理解する
2.イベントを理解する
現在では、オーディエンスを理解することが以前より難しくなっています。以前とは異なる方法でそうした情報を得ることはまでできますが、信頼度は低くなります。そこで、人口の推定値やオーディエンスの共通点からオーディエンスのおよその規模を試算することが、最低限できる取り組みだと、Bill Waltonは言い、「長い道のりにはなるでしょう」と続けました。
イベントを理解する
Bill によると、最高の最適化イベントは KPI だと言います。「Facebook や Google などのような API パートナーに、スケールにつながるような強力な指標を示せるのならば、そこをおさえるべきです。」収益は重要な指標ですが、最適化に活用できるような十分な頻度でイベントとしてとらえられない場合があります。
API パートナーから得られる結果を検証し、収益との関連性の高いイベントを特定し、そこに投資を行いましょう。
iOS 14 へのアップデートに伴う事象も考えるべきです。最大の懸念のひとつは、Facebook のバリュー最適化プロダクトへの影響でしょう。
マーケターは、さまざまな戦略をテストできるよう備えておく必要があります。
トラッキングをオンにしているユーザーに対してだけ広告を表示されるということならば、考えられる状況はひとつだけです。ただ、トラッキングをオフにしているユーザーにも広告が表示されるのならば状況は異なり、CPM が下げることになるかもしれません。可能性のある状況を想定し、テストして備えることが重要です。
クリエイティブのパフォーマンスを正確に特定することも課題となるでしょう。アトリビューションのレベルでクリエイティブのパフォーマンスを特定することはできなくなります。
Bill は次のように述べました。「これまでは、ユーザーが広告をクリックすると、インストールにつながった広告 ID またはキャンペーン ID を含むレスポンスを得ることができていました。これがなくなります。広告 IDを得ることはできますが、インストールにつながったクリエイティブがどれなのかを特定することはできなくなります。」
これにより、確度の低いパフォーマンス評価やデータが増えることなど、トレンドを見極めるうえでの幅広い影響が考えられます。ユーザー獲得チームは、最もパフォーマンスの高いクリエイティブを特定する方法を何とか繰り出さなければなりません。
また、収益最適化や課金イベント最適化に取り組む際に、真の定量的なクリエイティブテストを行えばそのコストはかなり大きくなります。したがって、効果的なマーケティング戦略を続けられるよう、低コストの戦略を特定するべきでしょう。
Bill は仔犬を例に、「かわいらしい仔犬をフィーチャーしてアプリインストールを促す広告を表示すればすぐに高い CTR が得られるかもしれませんが、バリューを生むことにはつながりません」と述べました。
過去の例を参考に、戦略を考えることも大切だと言います。
このような方法で、ユーザーを自社のマーケティングファネルに誘導することにつながっているパートナーを特定することができるはずです。
本セッションでは最後に参加者の皆様の質問にお答えする質疑応答がありました。
外部の代理店やサービスプロバイダーと組むことは推奨しますか?
Bill は、利点・欠点それぞれの側面があると答えました。
利点:
「外部エージェントを採用しなければ得られないような知見が得られる可能性はあります。外部の SaaS プロバイダにより、固定概念を超えた新たな考えが得られるかもしれません。」
欠点:
「KPIが複雑になるでしょう。外部・内部それぞれの異なるKPIを見極める必要が生じます。」
広告収益化のモデル分析により、どのようにユーザー獲得戦略を特定しているのですか?
「パートナーサイドの広告収益が、あらゆる収益イベントと一致するようにします。また、広告インプレッションとの関連性の高いイベントの有無を特定します。」
ユーザー獲得戦略で見落としがちな点は?
Jerome は次のように語りました。「コホートと計測が重要な点です。インストール、クリック、インプレッションなどに基づいてコホートを形成するなど、特定の視点で計測を始めれば、その視点を変えるのは難しくなります。」
Bill は、指標の定義も重要だと付け加えました。「多くのパートナーが用いるさまざまな指標が、自社のコンバージョンのファネルと一致しない場合があります。パートナーのデータを見る際に何を特定しようとしているのか?例えばクリックだと、ユーザーの意欲を促すクリックはどれなのか、または通常よりも高い CTR をキャンペーンで実現しているように見えるのはどれなのかを見極めるのも重要です。」
iOS 14のユーザー獲得への影響をどう考えますか?
Jerome は、「それについては Bill ともよく議論します。MMP(モバイル計測パートナー)やプロダクトチームとコミュニケーションをとり、オプトインの可能性を高められる方法を探ることが大切です。柔軟性を維持し、方向性や問題意識を備えたアプローチを続けることが重要です」と語りました。
Bill は、オプトインのフローの最適化を提唱しました。「いずれかのパートナーが先んじて良い状況へと抜け出す可能性があります。マーケティングチームとしては、MMPと密にコミュニケーションをとり、ポスト IDFA の世界を理解するよう努めることが大切です。」
スピーディーな適応力と困難への備えが、成長持続に向けたカギとなります。
マーケティングやユーザー獲得に影響する流れからは今後も目が離せません。AppLovin が今後も同様のトピックでセミナーを開催する際にはぜひご確認ください。
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