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AppLovin x アドテック東京
モバイルECならではのCRMとは?売上向上と新たなエンゲージメントの築き方

Amy Mills
11月 14日, 2018

AppLovin は、2018年10月4日・5日、東京国際フォーラムにて開催されたアジア最大規模のマーケティングカンファレンス「アドテック東京」に初出展いたしました。

ブースに豪華ゲストを迎え、モバイルECからオムニチャネルマーケティングまで、モバイル業界の幅広いテーマについて興味深いお話を伺いました。この全10セッションは、AppLovin 公式Facebookページでライブ配信を行いました。

当日開催されたセッションのうち、本記事では第5回目のセッション「モバイルECならではのCRMとは売上向上と新たなエンゲージメントの築き方」の様子をお伝えします。登壇者には、株式会社ディノス・セシール 石川様、 株式会社ヤプリ 金子様をお迎えしました。

https://www.facebook.com/AppLovinJP/videos/1168264396657414/

 

EC が売上の50%を超えるディノス・セシール社

金子:このセッションは、ディノス・セシールの石川さんにお越しいただいています。20分と非常に短い時間ではございますが、石川さんに「モバイル EC ならではのCRMとは?」と題してお話を進めてまいります。では簡単に、ディノス・セシールでの石川さんの担当業務的な範囲を教えていただけますか。

石川:ディノス・セシールは、カタログ通販のディノスと、セシールという元々別の会社が5年ぐらい前に統合され、今は一つの会社になっています。テレビ事業とカタログ事業がメインですが、当然受注のチャネルとしてはeコマースが伸びていまして、 比率としては EC が売上の50%を超える状態になっています。全体で約1200億円の流通なので、600億円程を EC で売っているという意味では、数字だけ見ると日本の中でも比較的大きめの EC サイトを運営しています。

私は、「チーフイーコマースオフィサー」(CECO)という肩書きで全体の戦略や運用の体制を作っています。

金子:元々カタログ通販が大きいとは思いますが、ECが伸びているとはいえ、紙の媒体の効果がまだまだあるということでしょうか。

石川:そうですね。純粋にeコマースで集客をかけたり、想起させられている率は正確には計測できませんが、カタログが発行されたタイミングや、紙のDMが届いたタイミングで EC の売上がはねるというのが現状です。

金子:24時間買えるし、モバイルからも買える、という点で販売の受け皿という部分にeコマースがある、ということですね。

石川:そうですね。その役割は大きいですね。

金子:モバイルの比率はいかがなものでしょうか。

石川:アクセスの比率は当然半分を超えています。購入の比率で言うと、まだ少し PC が多いですが、モバイルの影響はとても大きいですね。

 

アプリ化する意義とは

金子:ヤプリはアプリを作っている会社ですが、当然ながらディノス・セシールさんでもアプリ活用が進んでいたりしますか?

石川:ヤプリさんのプラットフォームを活用し、二つのアプリを展開しています。一つは「ディノス セール公式アプリ」(Android|iOS) という名前で、セール商品が定期的に出ますので、それをお客様になるべく早くお伝えすると。どうしても目玉の商品はすぐ売り切れてしまうので、ロイヤリティの高い方に見ていただきたいのを考えると、クローズドの環境でプッシュ通知などをしていくのが良いので、そういう使い方をしています。もう一つは、テレビ通販事業がありますので、それに特化した「いいものアプリ」(Android|iOS) を展開しています。

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ディノス・セシール社が提供する「いいものアプリ 」(左)、「ディノス セール公式アプリ 」(右)

金子:今年はメルカリさんが上場したり、アプリを活用してECの市場も伸びていたりしますね。その中でディノス・セシールさんとして、今セールアプリやテレビショッピングと連動したアプリをやられていると思いますが、今後アプリECの未来像についてどう思われますか?

石川:元々ウェブの方でサービスを展開している企業が多いじゃないですか。メルカリさんのように今時だと、アプリからスタートしてユーザーを獲得するというサービスもありますが、割とトラディショナルなビジネスだと、当然先にウェブサイトがあります。その状況でアプリを投入すると、「アプリでウェブサイトをブラウジングする」だけみたいなものがたくさんありますよね。Apple さんなどはそれを止めようという流れにはなっているものの、eコマースで運営されているアプリの多くが、たぶんブラウジング用になってしまっています。色々な考え方がありますが、個人的にはそれはアプリ化する意義があまりないのかな、と思います。

金子:いわゆるショートカット的な意味合いしかなくなってしまいますからね。テクノロジーがどんどん発達していく中で、アプリならではの機能を活用すると、現状をただブラウジングするだけのアプリに、付加価値的な機能をつけることによって何か変わっていくことはありますか。

石川:そもそも本来は、アプリじゃないと体験できないようなUX が浮かんでから、アプリを作るべきだと思っているんです。弊社でいえば元々モバイルとの親和性は高いビジネスです。テレビにしろカタログにしろ、当然一番身近にあるデバイスは PC じゃなくて、もはやスマホなわけですよ。ソファーに寝っ転がってカタログ見る時やテレビを見てる時も、基本的にスマホが横にあるはずです。そこでアクションを起こしたいとなれば、わざわざ PC を立ち上げるのではなく、スマホでアクションしますよね。弊社はお客様がカタログを読んでいる時、通販番組を見ているタイミング時などに、モバイルを使ってしか体験できないような機能をお客様に提供しなければならないと考えています。

 

AR と画像認識で最高の顧客体験を提供したい

金子:ちなみに、今考えられている、顧客体験を付加価値に変えられるものって、何か思いつくところありますか?

石川:ヤプリさんが実現して下さると信じてこの場で言いますね(笑)。ヤプリさんのほうでARキットを使っていただいていますが、AR と画像認識技術の組み合わせを実現したいですね。

商品の現在価格や、今残っている在庫の数は、紙面上ではわからないので、気になる商品があれば当然どこかに問い合わせる必要があります。今まではウェブや電話で問い合わせて、「値段が下がっていますよ」や「残念ながらあなたのサイズに関しては在庫がないです」、などのやり取りをしていたわけですが、めんどくさいじゃないですか。なので、今思っているのは、AR と画像認識を使って、カタログを見ている、もしくはテレビを見ていて我々のアプリをかざしてくれたら、今のその方にとっての売値と残りの在庫の状況などが、瞬時にわかるという機能を提供できればと思います。EC サイトに行く必要もないし電話する必要もく、アプリ上でその情報が完結する。そして、気に入ってもらえればボタン一つで購入できる動線を作らないと、弊社はわざわざアプリを用意する意味がないのかなと。

 

アプリによって変化する CRM

金子:AR、スマホをカタログにかざすことによって、どの端末、どのお客様が、どのページを見ているか、そのようなデータも取れると、今後のマーケティングがどんどん広がりそうですね。

石川:元々のビジネスサイドの目的はむしろそっちで。ウェブの行動ログは取れているので、マーケティングオートメーションツールに接続して、自動接客が流れるようになっています。残念ながら紙というのは、送った人のデータと、買った買わないなどのデータしか取れていません。送った人がなぜ買わなかったのか、というデータが一切取れないので、そこで CRM が止まってしまいます。アプリを使って、かざしてもらうことでログが残れば、次のアクションに誘導できますよね。しかし、ログを残すためにはアプリをまず使ってもらう必要がありますよね。アプリを使ってもらうためには、サービスとして良いものを作らないとお客様は使ってくれないので、必然的に良いサービスを作ることが最優先事項です。

金子:是非一緒に良いサービスを作りたいと思っています。

石川:是非お願いします。

金子:PC が主軸だったときは、パーソナライズされたメルマガを送られていたと思いますが、今後もモバイルが CRM の主戦場になっていくと思います。モバイルをどのように CRM のチャネルとして使っていくのかは、どうお考えですか?

石川:正直まだこれだという答えが見つかっていません。CRM はプッシュ型、プル型と二つあると思うんですね。プッシュ型はモバイルになった瞬間にすごく強力なものがいっぱいあります。オウンドアプリのプッシュ通知もそうだし、LINE のアカウントによるプッシュ通知もそうです。メルマガよりも開封される可能性が高いような通知もありますが、その一方で、ユーザーから迷惑だと思われるものもありますよね。お届けしているコンテンツが毎回ものすごく貴重で、その方にとって価値があれば、ユーザーは嫌がらないかと思いますが、なかなか難しいじゃないですか。そうすると、どちらかと言うとプル型の CRM をどのように作るか、つまりお客様が自分でアクセスをしてくれる状況をいかに作ることが重要だと思います。そういう意味でも、モバイルを使った新しい購入体験を提供できれば、「使って下さい」と言わなくても自然に使ってくれるかと。カタログを見ているとセットで、アプリが起動されるような CRM の形にしていかないと、なんとなく行き詰まりそうな気はしていますね。

金子:石川さんは、古き良きものに原点回帰する、のようなこともあるかなと思っていて。この間は独自の取り組みとして、カートに商品を入れても購入に至らない顧客に対し、紙のDMを送る取り組みをされていたじゃないですか。あえて紙のDMで送ってみるというのはとてもディノスさんぽく、面白いと思いました。

石川:冷静に考えて、デジタルの世界に閉じてeコマースで勝負するのは相当難しい状況になってきています。生存戦略として何が必要かと考えた時に、デジタルを強化して「Amazonと楽天と戦いましょう」みたいな話にはならなくて。弊社の強みは他社と比べて、圧倒的に紙なんですね。しかし、業界自体がシュリンクしている中で、ひたすら同じ紙を送り続けても効果が期待できません。必然的に発想としては、強みである紙をより現代にマッチした形に変えることです。そのためにはデジタルなテクノロジーを使う発想になるので、24時間以内にパーソナライズされたリコメンドDMを送るというのも、まさにその発想の一つが具現化されたものですね。

 

お客様との新しいエンゲージメントの築き方

金子:これが最後のお題です。企業ごとにお客様に最適な顧客体験を提供して差をつけていかないと、それこそ Amazon さん、楽天さんに敵わないと思っています。お客様との新しいエンゲージメントの築き方について、ヒントがあれば教えてください。

石川:eコマースの文脈で言うと、楽天や Amazon、Yahooさんは、購買のファネル中で登場するのは実は最後なんですね。買うものをお客様が決めて、「これを買うぞ」となったあとに登場するプレイヤーだと考えています。本当はより重要な、「これが欲しい」と思うタイミングがファネルの前のほうに存在しているんですよ。それをネットでコントロールが全然できていない状況です。実は Amazon の売上は全米小売の4%ですが、ECだけで見ると44%なんですよ。つまりいかにeコマースが全小売の一部しか取れていないかという状況です。その中で、Amazon などと「これを買うぞ」と決めたお客さまの争奪戦をしても勝てないので、そうではなくて、弊社は「これが欲しい」と思う場所になるべきだな、と思っています。一つのエンタメ性なのかもしれないし、何か新しい情報を発見する場所なのかもしれないし、そのような位置に置き換わらないといけないのです。

金子:ディノス・セシールさんのカタログを開いて、例えば「素敵な家具だな、買いたいな」と思わせるようにするには、デジタルに変えていく必要があるんですかね。

石川:無理にデジタルに変える必要すらない気はしています。リアル体験のほうが、多分購買に近いので。その時に利便性を増すなど、面倒くさい煩わしい行為をしなくても済む、というところにデジタルが入り込んでいくべきと思います。僕らは今はとにかくフィジカルな体験をどうやってデジタルを使ってより良くするかという発想に行こうかなと思ってます。

金子:今日は貴重なお話ありがとうございました。ディノス・セシールの石川さんでした。

 

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